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    <title>寅の知</title>
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    <title>第８７回『戦後すぐぐらいの大阪』</title>
    <description>車内で漫画本を出して見ている。
大学生らしい。
公衆の中で漫画本を読む。
それが大学生。
大正生まれの私には不思議に思う。
我々が小学生時代に、
漫画本を読むのは親に隠れ内緒で読んだ。
大人に見つかると、
怒鳴られて叱られた。
それでも少年少女雑誌には...</description>
<content:encoded><![CDATA[
車内で漫画本を出して見ている。<br />
大学生らしい。<br />
公衆の中で漫画本を読む。<br />
それが大学生。<br />
大正生まれの私には不思議に思う。<br />
我々が小学生時代に、<br />
漫画本を読むのは親に隠れ内緒で読んだ。<br />
大人に見つかると、<br />
怒鳴られて叱られた。<br />
それでも少年少女雑誌には漫画も載る。<br />
何と変われば変わるものと驚く。<br />
<br />
戦時中、<br />
国民は総動員で召集令状を受け取らぬ者は、<br />
大会社等に徴用され会社の宿舎に寝泊りをする。<br />
敗戦と同時に全員解放され、<br />
故郷に一斉に帰るから、<br />
交通機関は未曾有の混雑。<br />
それに加えて、<br />
皆はリュックを背負う。<br />
駅に入る列車は、<br />
どの列車も鮨詰め状態。<br />
待っていると何時乗れるか心は焦る。<br />
貨物列車も引用する。<br />
心は焦る。<br />
貨物列車も引用する。<br />
心は焦る。<br />
貨物列車に無理に乗り込むと、<br />
豚がブウブウと迎える。<br />
豚と仲良く同車。<br />
かたや牛の貨物列車に同伴して生まれ故郷へ。<br />
留守を守る家族達突然の帰郷で、<br />
嬉しく迎えるが、<br />
サテ、<br />
食糧難に悲鳴をあげる。<br />
田舎は何とか食いつなぐが、<br />
都会は食い物も無く、<br />
空襲で焼け残った衣類や珍しい物を持って、<br />
田舎に買出しにリュックを背負い行く。<br />
田舎の農家の人たちのご機嫌を取り、<br />
泣き付き手に入れた食い物を背負い、<br />
満員列車に押し込められて乗り込む。<br />
列車内騒然と、<br />
浮き足立つ闇商人の一斉取調べ。<br />
早朝より必死な思いで、<br />
やっと手に入れた、<br />
家族の今夜の食料の米も、<br />
米の移動証明無く、<br />
家族の命綱の食料も遠慮会釈も無く没収されるが、<br />
走る列車内、<br />
逃げ口も無いが、<br />
中には荷物と共に飛び降りて、<br />
難を逃れる闇屋もいるが、<br />
殆どの者は言い訳聞かれず、<br />
命の食料を没収の憂き目。<br />
家では家族が今夜のご飯を楽しみに待つ。<br />
中には幼い子供に持たすが、<br />
それもはかない一時逃れ。<br />
<br />
雨の日。<br />
二階の窓より眺める目に、<br />
道路の中程に馬糞が盛り上がる中に、<br />
一握りの米が散乱する。<br />
一粒々を拾い手の平に置く。<br />
全部を拾い立ち去る。<br />
あの米食べるのであろうか。<br />
水で洗えば知らぬ人は米と見るだろう…。<br />
平和の人々の想像を絶する食料捜し。<br />
米と交換出来る何かを持つ者はまだ幸せ。<br />
空襲で全部を焼かれて、<br />
逃げ出した人々は人の捨てた残り物を漁る。<br />
子供の躾どころか、<br />
食い物捜しに目の色を変える親達。<br />
こうして毎日は過ぎ行く。
]]></content:encoded>
    <dc:subject>番外編</dc:subject>
    <dc:date>2007-10-18T19:02:18+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
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    <title>第８６回『戦後すぐの大阪』</title>
    <description>闇市が大阪の至る所で盛況を極める。
中でも大きいのは大阪駅前の闇市。
天幕を貼り、
狭い通路は人で埋まる。
茶碗の縁の欠けた物から、
数年も過ぎる雑誌類、
横には西洋ドレスの結婚衣装が並ぶ。

日常欲しい物は、
何でも金さえあれば買える。
巷では何を買...</description>
<content:encoded><![CDATA[
闇市が大阪の至る所で盛況を極める。<br />
中でも大きいのは大阪駅前の闇市。<br />
天幕を貼り、<br />
狭い通路は人で埋まる。<br />
茶碗の縁の欠けた物から、<br />
数年も過ぎる雑誌類、<br />
横には西洋ドレスの結婚衣装が並ぶ。<br />
<br />
日常欲しい物は、<br />
何でも金さえあれば買える。<br />
巷では何を買うにも、<br />
購入切符が入り用。<br />
切符を持参しても商品が無い。<br />
何時入るか知れぬ切符片手に、<br />
市中を彷徨い探す。<br />
<br />
日本橋を歩くと、<br />
B29の残骸が道の片側で人目を引く。<br />
通天閣周辺の新世界も焼け野原で、<br />
空爆の激しさを物語る。<br />
街角に二階建が二件だけが、<br />
取り残された様に建つ不思議。<br />
目に入る建物は掘っ立て小屋が多い。<br />
歩く者は多いが、<br />
大衆は何処に住んでいるのであろう。<br />
中国の南京の惨状が目に浮かぶ。<br />
殺し殺されて、<br />
住居は無惨な廃屋に。<br />
<br />
敗戦直後の国内の状況は知りませんが、<br />
私が大阪に出る時、<br />
宇野駅で列車に乗り込むと既に満席。<br />
窓際に腰掛けていると激しく窓を叩く。<br />
当時は入り口より乗り込むより、<br />
窓から入れば素早く席が取れる状態。<br />
兄は朝鮮人だから相手にするなと言う。<br />
その内に窓を開けて乗り込んでくる…。<br />
私は思わず、<br />
そいつの足を持ち、<br />
突き落とすと、<br />
多数が押しかけて、<br />
窓の外は口々に罵り奇声を挙げるが、<br />
私は敗戦直後、<br />
中国で散々な敗戦国日本人であるが為に、<br />
嫌な事に直面しておる。<br />
彼等に弱みを見せると図に乗り無謀を働くが、<br />
相手が強いと手出しはせぬ。<br />
兄の制止も聞かず、<br />
高飛車に出る。<br />
相手は隣へと移動する。<br />
私は大声でヨボ(朝鮮人)等に負けるなと叫ぶ。<br />
汽車は発車する。<br />
敗戦前、<br />
上海で中国人を苛める者の殆どが朝鮮人。<br />
俺は朝鮮人だと弱者で心卑しい国民性。<br />
幾分か落ち着いた時。<br />
兄はお前も強くなったと驚く。<br />
敗戦国日本、<br />
気力も敗戦か。<br />
常に虐げられた国民は、<br />
強い者には集団で襲うが、<br />
逃げると増長するが彼らの予想に反して、<br />
高飛車に出ると離散する心理を掴めば、<br />
彼らは弱い。
]]></content:encoded>
    <dc:subject>番外編</dc:subject>
    <dc:date>2007-10-17T19:23:44+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
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    <title>第８５回『これからは番外編思い出すままに』</title>
    <description>敗戦直後の日本国内の巷でよく見かけるのが、
若い娘が厚化粧をして、
昼の日中に得々とした態度で、
日本人を見下げる眼差しで、
進駐軍の兵士の腕にぶら下がり、
亦腕をくみ歩く姿。
それを世間ではパンパンと呼び、
さげしむ。
黒人の米兵士達、
田舎に行きチ...</description>
<content:encoded><![CDATA[
敗戦直後の日本国内の巷でよく見かけるのが、<br />
若い娘が厚化粧をして、<br />
昼の日中に得々とした態度で、<br />
日本人を見下げる眼差しで、<br />
進駐軍の兵士の腕にぶら下がり、<br />
亦腕をくみ歩く姿。<br />
それを世間ではパンパンと呼び、<br />
さげしむ。<br />
黒人の米兵士達、<br />
田舎に行きチョコレート等をバラマキ、<br />
民衆を集めて頃合はよしと、<br />
若い女を横抱きに野原で強姦を繰り返す。<br />
若い女が姿を消すと、<br />
土足で家にあがり家捜しをして女を探す。<br />
<br />
昭和十六年秋頃、<br />
黄浦江の岸壁で別れを惜しみ、<br />
米海兵隊員と上海のクーニャンが、<br />
岸壁で別れのキスをする。<br />
人目もはばからずお互い抱いて抱かれて、<br />
号泣を挙げて、<br />
人目もはばからず別れを惜しむ姿。<br />
横目に眺めて何と浅ましいと見たが、<br />
何処の国の娘も金と強者には勝てず。<br />
男と違い、<br />
女の武器を使えば先方よりなびく。<br />
それが日米戦争の前奏戦だったのか。<br />
何処の国民も戦争に負けると、<br />
我々から眺めると地獄の日夜だが、<br />
戦争で勝てば彼らには退屈凌ぎに過ぎぬ遊び。<br />
軽快にジープが走る。<br />
同乗の米兵、<br />
街を歩く若い女性に投げキッスを贈る。<br />
答えるとジープを止めて、<br />
笑顔と共に娘を連れ去る。<br />
これが敗戦国の偽りの無い姿。<br />
腹が空いては生活も出来ぬ現状だから？<br />
<br />
巷では失業者多数。<br />
その救済に土木作業をする。<br />
その日雇い、<br />
日給が二円四十銭。<br />
それを世間ではニコヨンと呼ぶ。<br />
盛り土をモッコに入れて、<br />
前後二人で担い運ぶが、<br />
モッコの中には一握りの土が入る。<br />
それを、<br />
ゆっくりゆっくりな歩調で、<br />
人目もはばからず作業をする。<br />
片側では見慣れぬ、<br />
大きな土運びの機械、<br />
ブルドーザーがエンジンの音も軽快に、<br />
一度に何百人もの土を一度で運び地均しする。<br />
通行の人達立ち止まり眺める。<br />
私が上海で飛行場建設の勤労奉仕で、<br />
モッコを二人で担ぎ土運びをする。<br />
その時分にはアメリカでは、<br />
こうした機械で仕事をしておったのか。
]]></content:encoded>
    <dc:subject>番外編</dc:subject>
    <dc:date>2007-10-16T19:40:14+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
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    <link>http://toranoti.fengfeeldesign.org/?eid=686393</link>
    <title>第８４回『農地改革とやら』</title>
    <description>農地改革とかで、
父も小作で無く地主になる。
政府より長年百姓に従事しているものに対して、
無償で百五十坪の山林を下賜される。

銀行に行き命と頼む、
三万円の小切手を出して請求すると、
何の連絡もありませんと断られる。
再々度請求するが同じ返事。
つ...</description>
<content:encoded><![CDATA[
農地改革とかで、<br />
父も小作で無く地主になる。<br />
政府より長年百姓に従事しているものに対して、<br />
無償で百五十坪の山林を下賜される。<br />
<br />
銀行に行き命と頼む、<br />
三万円の小切手を出して請求すると、<br />
何の連絡もありませんと断られる。<br />
再々度請求するが同じ返事。<br />
ついに諦めるが、<br />
それが私の躓きの始まり。<br />
<br />
山の開墾をしている、<br />
手伝えと言われて断りも出来ず、<br />
高熱を押して道具を担ぎ、<br />
父兄に従う。<br />
開墾は粗方大木は切り倒されて、<br />
その整理におおわらわ。<br />
仕事をしていると、<br />
上より大声で、<br />
大きな石が転げ落ちる早く退け。<br />
と、<br />
全部が素人、<br />
何回も危険信号で逃げつつの作業。<br />
切り倒した松雑木を、<br />
小さく切り薪に。<br />
持ち帰るが生木は意外と重い。<br />
大小の石がころころ出てきて難儀。<br />
その石を隣との境界に積み上げる。<br />
雑草の根も深い。<br />
大木を切り倒した。<br />
根を掘り下げると、<br />
必ず少ないが水が沸く。<br />
この水で成長しているのであろう。<br />
社会との仕組みを思い。<br />
世渡りも、<br />
金脈を早く掴んだ者が成功すると、<br />
教えられる。<br />
<br />
山の中腹、<br />
畑の水不足を思い、<br />
僅かに湧き出る水確保に、<br />
周囲をセメントで固める。<br />
休憩の折に遙か彼方の瀬戸内海を眺める。<br />
屋島の裾が海底に沈む。<br />
女木島が海上に浮くように浮かぶ。<br />
周囲を釣り船が、<br />
大小の船が行き通う。<br />
その中を縫う様に連絡船が、<br />
薄く煙を棚引かせ、<br />
のんびりと警笛を鳴らしつつ宇野に向かう。<br />
戦前と何の変わりも認められない。<br />
静かに波紋を残す瀬戸内。<br />
陸を望むと市街の中心部は、<br />
掘っ立て小屋が点々と目に入る様相。<br />
死力を尽くしての戦い。<br />
何が残った。<br />
戦争程に無意味な行為？は無い。<br />

]]></content:encoded>
    <dc:subject>戦後日本に帰ってきて</dc:subject>
    <dc:date>2007-10-12T19:44:03+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
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    <link>http://toranoti.fengfeeldesign.org/?eid=685671</link>
    <title>第８３回『貰うものは貰う』</title>
    <description>翌朝目覚めて、
食事も戴き市内の状況を見て歩く。
中心部は壊滅状態。
妹の婚家先は跡形も無く、
友達の家も見当たらぬ。
心に痛手を受けて帰る。
持ち帰りの残高、
七百円にも足らず。

噂を聞き市役所へ。
引揚者に配給の衣類を受け取りに行くと、
指定の物...</description>
<content:encoded><![CDATA[
翌朝目覚めて、<br />
食事も戴き市内の状況を見て歩く。<br />
中心部は壊滅状態。<br />
妹の婚家先は跡形も無く、<br />
友達の家も見当たらぬ。<br />
心に痛手を受けて帰る。<br />
持ち帰りの残高、<br />
七百円にも足らず。<br />
<br />
噂を聞き市役所へ。<br />
引揚者に配給の衣類を受け取りに行くと、<br />
指定の物の半分足らず。<br />
定数を要求すると、<br />
不機嫌な返答。<br />
課長を呼び出し不足分の説明を求める。<br />
ついに指定の分量より、<br />
多い物を出す。<br />
それを台に叩き付けて、<br />
文句を言えば数量多く出す。<br />
説明をしろと粘りに粘る。<br />
同じ引揚者に待って貰い交渉する。<br />
倍の品物を持って帰る。<br />
翌日、<br />
県庁に行き請求すると数量が少ない。<br />
我々が得心の出来る説明を求める。<br />
ついに市役所同様に、<br />
倍の物を持ち帰る。<br />
倍と言っても敗戦下知れた物。<br />
次兄、<br />
お前も強く変わったと驚く。<br />
自分を守る者は自分のみ。
]]></content:encoded>
    <dc:subject>戦後日本に帰ってきて</dc:subject>
    <dc:date>2007-10-11T20:24:20+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
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    <link>http://toranoti.fengfeeldesign.org/?eid=684652</link>
    <title>第８２回『やっと到着』</title>
    <description>プラットに屋根が無い。
皆と別れて宇野線に乗り換える。
八千人余が独りになる。
押して押されて、
どうにか乗り込むが、
背中のリュック、
両手にさげる風呂敷包み。
前には洗面器が身動きも出来ず、
やっと席は空いたと、
座ると終点の宇野駅。
連絡船に乗り...</description>
<content:encoded><![CDATA[
プラットに屋根が無い。<br />
皆と別れて宇野線に乗り換える。<br />
八千人余が独りになる。<br />
押して押されて、<br />
どうにか乗り込むが、<br />
背中のリュック、<br />
両手にさげる風呂敷包み。<br />
前には洗面器が身動きも出来ず、<br />
やっと席は空いたと、<br />
座ると終点の宇野駅。<br />
連絡船に乗り越える。<br />
<br />
身動きが出来るだけ心が休まる。<br />
高松を望むと闇に沈む。<br />
辺りの人に高松の様子を聞くが、<br />
皆はそ知らぬ顔。<br />
桟橋に安着する。<br />
市内の灯を集めた様に電飾光り輝く。<br />
勝手知った裏通りを、<br />
小雨の中、<br />
傘も差せず人通りも絶えた。<br />
真夜中に父の家を目指す。<br />
<br />
通る両側、<br />
家並みも立ち並ぶ。<br />
被害甚大と聞いたが間違いか。<br />
ここを曲がれば父の家はある。<br />
薄い街灯が点るが薄暗く何も見えず。<br />
通る目に家並みも建ち並ぶ。<br />
被害甚大は嘘か。<br />
父の家は無傷で建つ。<br />
<br />
暫く眺めて、<br />
戸を叩き、<br />
只今帰りました。<br />
戸が開き次兄の元気な顔。<br />
互いに見合わせ微笑む。<br />
真夜中に途中で強盗に出会わなかったか。<br />
最近は毎夜強盗が出る噂がある。<br />
庭に立つ私の姿は、<br />
背には大きな手製のリュック。<br />
両手に風呂敷包みを下げ首より、<br />
大きめの洗面器を吊り、<br />
背中に差すは洋傘。<br />
四月二日午前二時過ぎ雨の夜に帰る。<br />
<br />
今夜珍しく風呂を沸かしている。<br />
入れと下を焚き付けてくれる。<br />
風呂に入ると、<br />
全身鳥肌立つ熱があるのだろう。<br />
<br />
離れで就寝の父に帰国の挨拶。<br />
頭を枕より挙げもせず早く寝よ。<br />
仏間に入り。<br />
長々と母に帰国の挨拶。<br />
今夜は遅い、<br />
話しは明日にと床に入り熱を計ると、<br />
四十度。<br />
このまま寝付くと起きられぬぞ。<br />
自分に言い聞かせて就寝をする。
]]></content:encoded>
    <dc:subject>戦後日本に帰ってきて</dc:subject>
    <dc:date>2007-10-10T20:35:05+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
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  <item rdf:about="http://toranoti.fengfeeldesign.org/?eid=681301">
    <link>http://toranoti.fengfeeldesign.org/?eid=681301</link>
    <title>第８１回『とりあえず帰郷』</title>
    <description>九州は点在する飛行場が多いと聞く。
山間部の民家のまばらにも、
爆弾の後も生々しい。
間も無く夕暮れ、
車内に淡い電灯が点る。
突然の轟音に驚き目が覚める。
関門トンネルの中らしい。

引き揚げ列車は、
待避線に入り、
夜明けを待つらしい。
ふと横を見...</description>
<content:encoded><![CDATA[
九州は点在する飛行場が多いと聞く。<br />
山間部の民家のまばらにも、<br />
爆弾の後も生々しい。<br />
間も無く夕暮れ、<br />
車内に淡い電灯が点る。<br />
突然の轟音に驚き目が覚める。<br />
関門トンネルの中らしい。<br />
<br />
引き揚げ列車は、<br />
待避線に入り、<br />
夜明けを待つらしい。<br />
ふと横を見ると広島行きの空車が目に付く。<br />
無断での乗り換えは禁止されている。<br />
一部の独身者、<br />
皆の止めるのも聞かず乗り換える。<br />
広々とした車内にゆったり椅子を掛ける。<br />
ふと目覚めると、<br />
汽車は走る沿線の風景。<br />
何処もかしこも空漠で、<br />
壊滅的打撃を受けている。<br />
建ち並ぶ民家は瓦礫の状態。<br />
よくも之だけ根気良く、<br />
爆弾を落とせたと見入る。<br />
広島に近くなるに従い倒壊家屋。<br />
広島に鉄筋工場は渦巻き状態で倒れる。<br />
広島駅のプラットに立つ。<br />
見渡す四方は、<br />
瓦礫の山の残骸に言葉も無し。<br />
目立つ建物が頂上に至る迄、<br />
破壊も甚だしく建つ原爆ドームとか。<br />
小高い丘の裾に小さな鳥居が立つ不思議。<br />
駅前は通行に細く通路が通じている。<br />
その隙間よりチョロチョロ水が流れ出る。<br />
川は瓦礫の捨て場か…、<br />
赤茶色の大小の瓦礫が投げ込まれて、<br />
その隙間を縫いチョロチョロ細く水が流れる。<br />
<br />
流石は広島大都市。<br />
行き交う人々多数を数える。<br />
歩む半数は背中にリュックを背負う。<br />
引揚者か。<br />
兵隊さんの姿、<br />
裸足の人は無い。<br />
皆、靴か草履を履く。<br />
日陰で屯して行く人々を、<br />
無心な目で眺めるのは噂の戦災孤児か。<br />
それにしても只の一発の原子爆弾、<br />
戦争中上海で噂に聞く、<br />
日本で珍しい爆薬の製造をしたとか。<br />
その爆弾を落とすと、<br />
１万トンの軍艦でも１万メートル上空まで、<br />
吹き飛ばされる話。<br />
<br />
駅前に小旄を風になびかせて出店が並ぶ。<br />
うどんの看板。<br />
椅子に腰掛けてうどんを注文する。<br />
出てきたのは薄い色に浮く細長い海草。<br />
之がうどんかと聞き合わす横より手が伸びて、<br />
鉢ごとさげて逃げ去られる。<br />
追うにもリュックが重い。<br />
逃げ去るを只見逃す。<br />
結局疑わしい食べ物は食べもせず、<br />
代金のみ支払う。<br />
<br />
日陰で一休みして帰ろうと、<br />
改札口を通ると駅員、<br />
切符は？<br />
そんな物は持たぬと駅員と一悶着。<br />
結局強引に汽車に乗り込む。<br />
進むほどに倒壊家屋全部広島方面に倒れる。<br />
岡山駅に停車する。
]]></content:encoded>
    <dc:subject>戦後日本に帰ってきて</dc:subject>
    <dc:date>2007-10-05T15:54:11+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
  </item>

  <item rdf:about="http://toranoti.fengfeeldesign.org/?eid=680755">
    <link>http://toranoti.fengfeeldesign.org/?eid=680755</link>
    <title>第８０回『日本到着』</title>
    <description>鹿児島市民の皆様であろう、
夕景迫る広場で盛んに手を振り、
我々を出迎えて戴く。
下船が始まる。
狭い板の上を背中に両手に、
全財産を背負いトロトロ降りる。
腕を掴み、
白布の医者が予告も無く、
注射針を差し込む。
それも両腕に。
一歩進むと噴霧器で、...</description>
<content:encoded><![CDATA[
鹿児島市民の皆様であろう、<br />
夕景迫る広場で盛んに手を振り、<br />
我々を出迎えて戴く。<br />
下船が始まる。<br />
狭い板の上を背中に両手に、<br />
全財産を背負いトロトロ降りる。<br />
腕を掴み、<br />
白布の医者が予告も無く、<br />
注射針を差し込む。<br />
それも両腕に。<br />
一歩進むと噴霧器で、<br />
白い粉を全身に吹き付けられる。<br />
全部が無言で行われる。<br />
何とか地上に降り立ち歩む前に、<br />
老人達が腰を屈めて、<br />
何か挨拶してくれるが、<br />
意味不明で立ち往生。<br />
女学生が来て、<br />
この人達、<br />
お疲れ様お帰りと、<br />
挨拶をしております。<br />
数百名の皆様の歓迎か。<br />
その人達の衣服は粗末。<br />
殆どの皆様は裸足か麦藁履を履く。<br />
ほんの一部の人達が、<br />
運動靴を履くのを見られるが、<br />
破れ、<br />
底には穴のある状態。<br />
我々は引き揚げ者とは言え、<br />
殆どの者は、<br />
財産の新品で身を飾る。<br />
實に対象的。<br />
夕景にも関わらず、<br />
なにかとお世話になり、<br />
焼け残りの学校へ案内される。<br />
教室に毛布が敷き詰められている。<br />
皆は広いと大の字に寝る。<br />
接待の夕食を済ませて一夜を明かす。<br />
<br />
翌日、<br />
小雨降る中を近くの人々であろう、<br />
重いリュックも軽やかに、<br />
足取りも勇み、<br />
手を振りつつ去り行く。<br />
再び会う事もなかろうが、<br />
お元気にと、<br />
後ろ姿に挨拶をする。<br />
<br />
船の蒲団袋を降ろしたのを、<br />
独身者のみで駅まで運び、<br />
貨物列車に積み込み、<br />
客車に乗り込むと、<br />
満員状態で、<br />
座る椅子は見当たらぬ。<br />
所帯主達、<br />
涼しい顔でご苦労様。<br />
突然、<br />
隣の客車で大声を張り上げて、<br />
お前達は何様だ！！全員立て！！<br />
婦女子は詰めて座れ！所帯主は後方に下がれ！<br />
我々、<br />
空いた椅子に腰掛ける。<br />
団長、<br />
我々が選出した団長では無い。<br />
我々、<br />
独身者を何と心得る。<br />
お前は外に出ろと追い出す。<br />
汽車はコトコト黒煙を吐きつつ山野を過ぎる。<br />

]]></content:encoded>
    <dc:subject>戦後日本に帰ってきて</dc:subject>
    <dc:date>2007-10-04T18:25:49+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
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  </item>

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    <title>第７９回『続々々、日本に帰る時』</title>
    <description>顔色変えて座り込む女性を海に。
背を向けて男が一列に並び、
女性を舷側にと誘うが中々実行せぬ。
一人が誘いに乗ると、
次から次へと舷側で小便をして、
ほっとした表情を見ると、
何と無くこちらもほっとする。
が、
その度にお礼の霧雨の被害にあう。

一夜...</description>
<content:encoded><![CDATA[
顔色変えて座り込む女性を海に。<br />
背を向けて男が一列に並び、<br />
女性を舷側にと誘うが中々実行せぬ。<br />
一人が誘いに乗ると、<br />
次から次へと舷側で小便をして、<br />
ほっとした表情を見ると、<br />
何と無くこちらもほっとする。<br />
が、<br />
その度にお礼の霧雨の被害にあう。<br />
<br />
一夜慰安に。<br />
飛び入り慰労会を模様する。<br />
飛び入り多数で時間を忘れる想い。<br />
<br />
翌朝、<br />
自前の持込の食料も底を尽き、<br />
内地米と味噌汁の朝食が出る。<br />
美味しいと皆は喜び食べるが、<br />
それを手渡すのに難儀をする。<br />
狭い狭い、<br />
人との隙間に手渡すのは、<br />
思わぬ不始末もあった。<br />
船内放送で、<br />
只今から水葬をいたしますから、<br />
黙祷をお願いの放送。<br />
祖国を目の前にして、<br />
何故水葬に踏み切る。<br />
内地に身寄りが無いのだろうか。<br />
甲板に出る。<br />
船の後方に長く板を突き出し、<br />
その上に白布で全身に覆われた死骸が乗る。<br />
哀しい音楽の吹奏が流れる。<br />
船は減速して、<br />
尾を引く汽笛を鳴らしつつ一周する。<br />
板は徐々にさがり、<br />
白布に覆われた死骸は重い重石と共に、<br />
海底へ沈み行く。<br />
祖国を前にして…。<br />
<br />
進む右前方に五島列島が。<br />
祖国も近い。<br />
間も無く桜島を認める。<br />
鹿児島湾を船は静かに進む。<br />
船尾に大きな二メートルも有ろうか、<br />
魚が追尾する。<br />
皆は甲板に並び、<br />
近づく市街に見入る。<br />
市街の殆どは焼け野原。<br />
言葉無く甲板に立ち尽くす。<br />
廃墟の祖国。<br />
<br />
桟橋に着く。<br />
前方の右に若木の桜が満開だが、<br />
美しいと声をだし者、<br />
一人としていない。<br />
その横に垢錆びた戦車が二台、<br />
寂しく敗戦を物語る。
]]></content:encoded>
    <dc:subject>中国</dc:subject>
    <dc:date>2007-10-03T19:31:25+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
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  <item rdf:about="http://toranoti.fengfeeldesign.org/?eid=678846">
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    <title>第７８回『続々、日本に帰る時』</title>
    <description>その夜。
警備当番の籤引きがあった。
不運にも私が引き当てる。
熱は依然として四十度。
熱を理由に交代と思うが、
見知らぬ者の集合そのまま甲板に。
出るとあの蚕棚の中で人が寝る。
横になり、
頭を挙げる余地も無い。
でも船底と違い余裕を感ずる。
でも三...</description>
<content:encoded><![CDATA[
その夜。<br />
警備当番の籤引きがあった。<br />
不運にも私が引き当てる。<br />
熱は依然として四十度。<br />
熱を理由に交代と思うが、<br />
見知らぬ者の集合そのまま甲板に。<br />
出るとあの蚕棚の中で人が寝る。<br />
横になり、<br />
頭を挙げる余地も無い。<br />
でも船底と違い余裕を感ずる。<br />
でも三月末の夜風は身に冷たい。<br />
甲板上は広い。<br />
積み上げた蒲団袋の陰で、<br />
各自の持ち場を受け持つ。<br />
夜半の頃、<br />
怪しいとの連絡がある。<br />
物陰より見ていると、<br />
船底の石炭を持ち出しているらしい。<br />
船員に連絡をと思うが船室を知らぬ。<br />
彼等五、六名。<br />
連絡しつつ石炭を持ち出している。<br />
彼等の落とした石炭を掻き集めて様子を覗う。<br />
頃合はよしと、<br />
一斉に無言で蒲団袋の陰より、<br />
石炭を投げつける。<br />
目標は大きくて近い。<br />
面白い程あたる。<br />
夜盗達慌ててロープに縋り逃げ下りる。<br />
その頭を狙い定めて大きな石炭を落とす。<br />
石炭と共に水飛沫を挙げて落ち込み、<br />
船に逃げ去る。<br />
残党が居るやも知れぬと探すと、<br />
一人隠れる。<br />
そいつを引き出して、<br />
皆で殴る蹴るの溜まった鬱憤を晴らす。<br />
殺せば面倒と警備の中国兵を呼ぶ。<br />
兵いきなり銃の先で、<br />
息も絶え絶えの盗人の腹を突く。<br />
翌朝、<br />
皆に話すと何故呼ばぬと。<br />
疲れはひどい遅い食事を済ませて寝る。<br />
ふと目覚めると、<br />
船のローリングの静かな音。<br />
慌てて甲板に出ると、<br />
船は早くも揚子江を下る。<br />
上海の都市は見えず。<br />
<br />
晴天に恵まれ、<br />
波静かな洋上を船は進む。<br />
広い甲板も人で狭く感ずる。<br />
時間と共に地獄の責め苦に苦しむ。<br />
八千余名の乗船に男便所は無い。<br />
女の便所が五ヶ所並ぶだけ。<br />
便所の前は五列の長蛇の列。<br />
中には溜まらず放尿して居る者もいる。<br />
態度で分かる。<br />
男は船の細い鉄柵に捕まり放尿するが、<br />
それも船の舳先が波に持ち上げられる時を狙い、<br />
放尿する。<br />
反対に船が波と共に、<br />
舳先が沈む時に放尿すると、<br />
吹き上がる風と共に、<br />
他人の自分の小便が霧雨となって、<br />
吹き上がり、<br />
前進に小便の被害を被る。<br />
洗う水は皆無の状態。<br />
水筒の飲み水が無くなると、<br />
甲板上に一ヵ所備え付けのタンクの前で、<br />
細く細く出る水を受けるが、<br />
なかなか水筒に溜まらず。<br />
後ろは長い列が続く。<br />
船員に水を貰いに行くと、<br />
お金は要らぬ、<br />
何か木綿物との交換と言われる。<br />
日本人の人情も地に落ちたか。
]]></content:encoded>
    <dc:subject>中国</dc:subject>
    <dc:date>2007-10-01T20:03:58+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
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  <item rdf:about="http://toranoti.fengfeeldesign.org/?eid=677773">
    <link>http://toranoti.fengfeeldesign.org/?eid=677773</link>
    <title>第７７回『続、日本に帰る時』</title>
    <description>進む前方の廃屋の前で、
多くの日本の兵隊さん達が、
何かを叫びつつ、
大きく背伸びをしつつ、
手を我々に向かい降る。
我々も負けじと振り落とされぬ様、
手を振り答える。
かつては中国兵と戦い優位に立ったが、
戦い敗れて、
この悲惨さ。
我々以上に故郷が...</description>
<content:encoded><![CDATA[
進む前方の廃屋の前で、<br />
多くの日本の兵隊さん達が、<br />
何かを叫びつつ、<br />
大きく背伸びをしつつ、<br />
手を我々に向かい降る。<br />
我々も負けじと振り落とされぬ様、<br />
手を振り答える。<br />
かつては中国兵と戦い優位に立ったが、<br />
戦い敗れて、<br />
この悲惨さ。<br />
我々以上に故郷が恋しいだろう。<br />
<br />
大きく凹凸の悪路を走り、<br />
トラックは止まる。<br />
見渡す数個の家が立つ。<br />
荷物を降ろして、<br />
道路の両側に梱包を解いて、<br />
中身を点検しやすく並べる。<br />
待てど検査官姿を見せず。<br />
天気は良し。<br />
広げた蒲団で昼寝と洒落込む者も居る。<br />
想いは敗戦以来の様々。<br />
数少ない、<br />
目の前に有る持ち帰りの品々。<br />
人伝に聞くと、<br />
日本銀行で軍票の、<br />
九十五万円を持参すると、<br />
日本に帰ると受け取れる。<br />
三万円び小切手を切ってくれると聞き、<br />
早速、小切手と交換する。<br />
噂では三万円もあれば、<br />
都市でも家の二、三軒は買えるとの事。<br />
これだけあれば当分は生活出来るだろう。<br />
手持ちの千円を途中で、<br />
途中で使い果たしても安心との想い。<br />
<br />
私は戦争中は皆の注意も聞かず、<br />
坊主頭で過ごす。<br />
坊主頭は日本人のシンボル。<br />
何時、<br />
街を歩き襲われるかも知れず。<br />
だが、<br />
敗戦で気分も変わり伸ばす。<br />
散発屋に行くと、<br />
散発しながら、<br />
手の足の爪を切り耳掃除、<br />
マッサージもしてくれて、<br />
終わるとコーヒー、煙草が出る。<br />
私は煙草は吸わなぬ、<br />
お菓子が出る。<br />
安い街頭での散髪。<br />
まず髪を剃ると汚い雑巾の様な布で、<br />
つるりと撫ぜて終わり。<br />
<br />
上海の正月は、<br />
日本程賑やかでないが、<br />
秋の月見の折りは日本の盆と、<br />
正月の賑わい、<br />
先祖の仏前を飾り、<br />
溜まった一年の支払いも兼ねる。<br />
毎日の生活の衛生の観念の大きな違い。<br />
汚いの言葉はあるが、<br />
溜まり水で米を研ぐ、<br />
直ぐ横でオムツを洗う神経の持ち主。<br />
判断に迷う。<br />
お国が違うと様々な違いが目立つ。<br />
それに笑顔を絶やさず、<br />
親しみ安い。<br />
最低の貧乏人は何一つ無い状態。<br />
でも生活をしている。<br />
私も上海に来て早くも七年近く生活をする。<br />
敗戦で祖国に追い返され、<br />
無銭世界一周は夢と消え去る。<br />
無一文に等しい。<br />
これからの人生、<br />
凶と出るか吉と出るかお楽しみ。<br />
目の前の少ない持ち物を寂しく眺める。<br />
不用の中国紙幣を集めて、<br />
検査の前に、<br />
日本に持ち帰っても使用出来ませんと、<br />
手渡す。<br />
ていの良い賄賂。<br />
検査が始まる見て回るだけ、<br />
それでも相当に没収されている。<br />
誰かに頼まれた品々であろうか。<br />
直ちに梱包する。<br />
梱包が終わると独身者のみ残り、<br />
トラックに積み込む作業。<br />
総数、<br />
八千個余り。<br />
トラックに積み込み投げ挙げるが、<br />
減る様子もない。<br />
積み上げて山なす荷物を締めるロープにしがみ尽き、<br />
大きくトラックは跳ね上がり下がる。<br />
<br />
凹凸道の両側を背嚢ならぬ、<br />
小さな袋を背負い、<br />
両側を疲れきった足取りで、<br />
延々と日本の兵隊サンが続く。<br />
第一線で死力を尽くして戦い、<br />
利有らず敗戦で、<br />
祖国に帰る隊列か。<br />
気力も使い果たしたのか、<br />
トラックを見上げる者もない。<br />
休止であろうか、<br />
前より倒れ込むように座り込み動こうともせぬ。<br />
戦争で酷使され果ては使い捨て。<br />
我々も蓄積した財産を放棄して、<br />
今、<br />
祖国に帰る途中です、<br />
と心で話を掛けつつ、<br />
揺れる上よりお別れをする。<br />
桟橋に着く。<br />
直ちに引き揚げ船の甲板に、<br />
積み上げの作業に酷使される。<br />
作業終わり歩み板を渡り、<br />
甲板に出る。<br />
周囲二段の蚕棚宜しく長く、<br />
上下幅少ない長い箱が並ぶ。<br />
梯子段を下りて船室に入る。<br />
むっ、<br />
とする程の人。<br />
息で気分も悪くなる。<br />
<br />
引き揚げ船、<br />
栄宝丸八千トン余りの貨物船。<br />
船内は板の上に、<br />
半分腐っる悪臭放つ筵が敷いている。<br />
<br />
先発して船に乗り込む所帯主達、<br />
雑談しながら口先でご苦労さん。<br />
我々の座る場所も無い。<br />
皆を立たせて各班とも話し合い。<br />
リュック、<br />
待ち帰りの品々を積み上げて、<br />
境界線としてお互い譲り合い座るが、<br />
人数多くて座れない。<br />
その間、<br />
所帯主達手も出さずボンヤリ。<br />
つっ立つ。<br />
張り倒したい気分を押さえて、<br />
何とか密着状態でも座れた。<br />
夕飯にしようと各自弁当を広げる。<br />
各自、<br />
それぞれに工夫して嵩張らぬ食事を広げる。<br />
言葉も無く食事は終了する。<br />
雑談も無く寝ようと横になるが、<br />
狭くて横にも成れず、<br />
一騒動を繰り返し、<br />
お互い交互に横に成り、<br />
人の足を抱えて横になる。
]]></content:encoded>
    <dc:subject>中国</dc:subject>
    <dc:date>2007-09-30T05:58:55+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
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    <link>http://toranoti.fengfeeldesign.org/?eid=676922</link>
    <title>第７６回『日本に帰る時』</title>
    <description>2月下旬頃、
待ちに待った日本に変えれる風説が流れる。
日本人の生活態度が一変する。
一月以来、
天候悪く小雨が降る中を、
買い物に走るが、
何をどれだけ持って帰れるのやら、
日毎に変更の噂が流れる。
あらゆる物の新品は持ち帰りは禁止。
日本人目当てに...</description>
<content:encoded><![CDATA[
2月下旬頃、<br />
待ちに待った日本に変えれる風説が流れる。<br />
日本人の生活態度が一変する。<br />
一月以来、<br />
天候悪く小雨が降る中を、<br />
買い物に走るが、<br />
何をどれだけ持って帰れるのやら、<br />
日毎に変更の噂が流れる。<br />
あらゆる物の新品は持ち帰りは禁止。<br />
日本人目当てに物価は上昇する。<br />
反物、毛糸類の持ち帰りは禁止らしい。<br />
と買い物帰りの者の話。<br />
私も白の毛糸を買い求めて、<br />
編み方を習い太い編み針で編む、<br />
出来上がりは問わぬ毛糸の持ち帰り。<br />
<br />
あらゆる商品の新品の持ち帰りは禁止なので、<br />
皆は下着を買い、<br />
水に着けて絞り、<br />
そのまま乾かして古着に混ぜる。<br />
皆は知恵を出し合い、<br />
一品でも多くと話し合う。<br />
内地は何もかも不足と噂が流れる。<br />
<br />
持ち帰り品。<br />
金銀宝石、掛け軸、書画、骨董類の、<br />
持ち帰りは禁止する。<br />
違反者発見の場合は、<br />
同乗船全員の持ち帰り荷物を没収する厳しい内容。<br />
重量は一人三十キロ以内とする。<br />
蒲団は上下一枚を一組とする。<br />
<br />
棉綿の蒲団は重量がある。<br />
絹布団を探す。<br />
軽くて数多く持ち帰りたい。<br />
着物も冬のオーヴァも、<br />
冬の様々の着る物と思うが重量が嵩む。<br />
<br />
毎日持ち帰りの品を梱包しては、<br />
重量を計り、<br />
思案投げ首を繰り返す。<br />
蒲団袋の重さにも悩む。<br />
子供に大人の靴下を何足も履かせ試したとか。<br />
毎日苦慮を繰り返す。<br />
一番心配な持ち帰り金額は、<br />
一人日本円の千円を最高とする。<br />
<br />
第一陣の引き揚げ船が、<br />
上海の岸壁を離れる。<br />
もう間違いなく祖国に帰れる。<br />
第二陣が手を振り元気に租界を出て行くが、<br />
夕刻近く、<br />
首を項垂れてしょぼしょぼと、<br />
手ぶらで全員が租界に帰る。<br />
一人の隠し持った宝石が発見されて、<br />
全員の持ち帰り品を没収されて、<br />
手ぶらで全員が租界に追い返された。<br />
小さな宝石、<br />
何処にでも隠せると安心していたが、<br />
持ち帰り品の全部を、<br />
道に広げて検査をされたとか…。<br />
残る皆の同情を集めて、<br />
持ち帰りたくとも持ち帰れない品々の寄付で、<br />
次の引き揚げ船で祖国に向かう。<br />
身体検査迄されたとか聞き、<br />
再度の梱包のし直し。<br />
<br />
第三便で、<br />
ここへお世話をしてくれた友達が、<br />
元気に帰る。<br />
<br />
突然、<br />
私は高熱に冒される。<br />
四十度。<br />
体温計の狂いだろうと買いに来るが、<br />
熱は依然として四十度を繰り返す。<br />
清原サン、<br />
医者を探して連れて来るが、<br />
その医者も帰国の雑路折り。<br />
医者探しも苦労するとか。<br />
第三次が揚子江を下る。<br />
船底に戦争中敷設の魚雷に接触被害を受けたが、<br />
被害者無く、<br />
全員裸で租界に帰る。<br />
友達も帰る。<br />
何かを手助けをと思うが動けぬ。<br />
皆の同情を買い、<br />
様々な衣類等の寄付を梱包して、<br />
次の便船で祖国へ。<br />
だが持ち帰る品々に、<br />
何の思い出も無い寂しい荷物。<br />
本当にお気の毒と思う。<br />
別の友達も次の引き揚げ船で祖国に帰る。<br />
皆は祖国に帰る荷造に忙しい。<br />
<br />
頭を冷やそうと洗面器を下げて、<br />
二階に降りて水道水で頭を十分に冷やして、<br />
洗面器に水を冷やそうと洗面器を下げて、<br />
二階に降りて、<br />
水道水で頭を十分に冷やして洗面器に水を入れて、<br />
一段一段と昇りつつ頭を冷やす。<br />
昇り詰めると、<br />
洗面器の水から湯気が立ち昇る。<br />
面倒くさくなり二階の水道の前で、<br />
夜明けを迎える。<br />
医者も来ず部屋で何か良い薬でもと思い、<br />
探すと小瓶に入る、<br />
キニネーを見つける。<br />
マラニアの薬。<br />
自棄も手伝い一気に一瓶を飲み下す。<br />
目覚めたが依然として熱は四十度。<br />
寝ても居られず、<br />
帰国の買い物に走る。<br />
高熱に冒されつつどうにか、<br />
梱包をすますと、<br />
あれもこれもと思うが、<br />
思い切って捨てて行こう。<br />
明日は帰国の日本大陸の垢を落とそうと、<br />
風呂に入ると全身鳥肌立つ。<br />
蒲団袋の二十キロ。<br />
大きなリュックは何ダースも使い、<br />
タオルで造った。<br />
帰国してバラすとタオルで使える。<br />
リュックの中には雑多な物が、<br />
押し込められている。<br />
両手に下げる風呂敷包には、<br />
一品でも多くと雑多な物が入る。<br />
首から下げるは、<br />
大き目の洗面器の中には、<br />
日用品を詰め込む。<br />
背中には洋傘を差し込む。<br />
そして連絡の三日間の食料と飲料水を入れる。<br />
嵩張らぬ様に食パンを寝押しして、<br />
何枚も詰め込む。<br />
部屋に残す数々の思い出の洋服、<br />
下着、オーバー。<br />
持ち帰りたいが高熱の体力には限界を感ずる。<br />
何回も何回も残す品物に心は残る。<br />
残る品物持ち帰れない。<br />
残金は全部没収とか。<br />
惨めな思いに深ける。<br />
<br />
三月二十九日午前五時指定の集合場所に集まる。<br />
全員の梱包荷物の計量全員パス。<br />
暇な中国兵、<br />
誰彼構わず短銃を胸に突き付けて遊ぶ。<br />
何でも、<br />
さらせと無言で睨み付ける。<br />
全員の持ち帰りの梱包品を米軍のトラックに積み込み、<br />
夜明けの紅口の繁華街をトラックは走る。<br />
海軍の陸戦本部は静かに水兵さんの姿も無し。<br />
右を望むと上海神社が霧の中に心無しか寂しく、<br />
我々を見送る。<br />
再びお参りする事もなかろう。<br />
揺れる梱包に縋り、<br />
手を合わせてお別れをする。<br />
<br />
サヨナラ、と。
]]></content:encoded>
    <dc:subject>中国</dc:subject>
    <dc:date>2007-09-28T20:34:12+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
  </item>

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    <title>第７５回『物価の高騰』</title>
    <description>日本租界に収容され、
日毎に物価高騰する。
喫茶店でコーヒーを飲むと、
一杯七万円。
百万円札の束の帯封が有れば、
少々足りなくても百万円で通用する。
道を歩くと千円札五千円札が風に舞うが、
拾う者なし。

中国政府通貨切り下げに踏み切る。
軍票の一万...</description>
<content:encoded><![CDATA[
日本租界に収容され、<br />
日毎に物価高騰する。<br />
喫茶店でコーヒーを飲むと、<br />
一杯七万円。<br />
百万円札の束の帯封が有れば、<br />
少々足りなくても百万円で通用する。<br />
道を歩くと千円札五千円札が風に舞うが、<br />
拾う者なし。<br />
<br />
中国政府通貨切り下げに踏み切る。<br />
軍票の一万円札と旧支那紙幣十円との交換する。<br />
ある日、<br />
ここの主人清原サン、<br />
地下室の石炭置場に来てくれと、<br />
共に降りると、<br />
片隅を掘り下げてくれと、<br />
言われるままに掘り下げると、<br />
箱が出てくる。<br />
開けて中身を取り出すと、<br />
包装した包が出てくる。<br />
開封して驚いた。<br />
現在交換の十円札の束が有るは有るは…、<br />
一、二、三と札束が出る。<br />
こうした事も有ろうかと、<br />
隠して置いたと…。<br />
流石は資産家、<br />
我々には思いも寄らず、<br />
この人、<br />
若い頃上海に来て、<br />
悪戦苦闘の末に蓄財したとか。<br />
人生頑張りの一言に尽きる。<br />
<br />
何時までも子供を遊ばせても置けぬと、<br />
民家で寺小屋式を開校する。<br />
体操の時間に道路で体操をしていると、<br />
珍しいのか大勢の中国人が見物に来る。<br />
その内、<br />
童子をけしかけて、<br />
体操をする女学生のスカートをめくる。<br />
あわてる様子が面白いと手を叩き繰り返す。<br />
我々は嫌の思いで眺めておった。<br />
ある日、<br />
一人の青年が警備の中国兵の銃を取り上げて、<br />
そいつを人質に立て篭もる。<br />
一視同仁怱ち手に手に何かを下げて、<br />
要所要所に立て篭る。<br />
殆どが除隊兵、<br />
戦闘準備は万全。<br />
上の者達が交渉をしたのであろう。<br />
間もなく、<br />
平穏に終結を見る。<br />
それ以来、<br />
中国人おとなしく見る。<br />
こうした、<br />
いざこざは良く耳にする。
]]></content:encoded>
    <dc:subject>中国</dc:subject>
    <dc:date>2007-09-27T18:50:06+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
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    <title>第７４回『奥地の引揚者』</title>
    <description>世相も何の変化も見られず正月を過ぎる。
一月も半ば冷たい氷雨降る日。
奥地よりの引揚者、
今夜上海駅に着く。
出迎えをしようと多数、
駅構内で待機する中、
屋根の無い貨物列車が滑り込む。
薄暗いプラットに、
薄着も汚れ、
立つ力もひょろひょろと、
人に...</description>
<content:encoded><![CDATA[
世相も何の変化も見られず正月を過ぎる。<br />
一月も半ば冷たい氷雨降る日。<br />
奥地よりの引揚者、<br />
今夜上海駅に着く。<br />
出迎えをしようと多数、<br />
駅構内で待機する中、<br />
屋根の無い貨物列車が滑り込む。<br />
薄暗いプラットに、<br />
薄着も汚れ、<br />
立つ力もひょろひょろと、<br />
人に縋り降りた。<br />
途端に冷たいホームに座り込む。<br />
我々無言で様々に手助けをする。<br />
奥地で汽車に投げ込まれる様に、<br />
貨物列車に乗るが、<br />
止まる駅々で、<br />
持ち出した物は強奪され、<br />
今はご覧の姿です。<br />
と、<br />
涙ながら話す。<br />
突然、<br />
子守唄が弱々しく流れる。<br />
昨夜は南京駅の待避線で、<br />
氷雨降る中、<br />
無蓋の貨物車の中で、<br />
皆は寄り添い一夜を明かす。<br />
そんな折に、<br />
母親が乳児に乳を与えようと、<br />
乳児は既に息絶えておった。<br />
それ以来、<br />
片時も手放さず、<br />
あぁして抱き、<br />
子守唄を唄うのです。<br />
薄汚れた着衣を纏い、<br />
我が乳児を抱きしめて唄う唄声を、<br />
しみじみ聞きつつ、<br />
敗戦の惨めさをつくづく寂しく寂しく、<br />
心に刻む。<br />
国防婦人の人達が、<br />
どうしても手放さぬ乳児を、<br />
風呂に入れると約束して、<br />
乳児を受け取ったとか。<br />
その後の様子は知りません。<br />
<br />
皆様を居留民団に収容して、<br />
上海の在住の皆様に衣類の寄付を募ると、<br />
多数の寄付が集まったとか。<br />
その後も、<br />
次々と奥地より悲惨な姿の引揚者、<br />
上海駅に降り立つ。
]]></content:encoded>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2007-09-26T18:48:08+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
  </item>

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    <title>第７３回『千載一遇、のはすが。』</title>
    <description>夜長を応接室に集まり、
時間潰しに将棋に麻雀にトランプ、花札にと、
面白く遊ぶが、
何かを賭けようと、
初めは面白半分が日が立つ従い、
昼夜を分かたず丁半に熱中する。
掛け金も大きく破産者も出る。
人数足らぬ時に誘いに来る。
皆は半玄人、
振込み多く取...</description>
<content:encoded><![CDATA[
夜長を応接室に集まり、<br />
時間潰しに将棋に麻雀にトランプ、花札にと、<br />
面白く遊ぶが、<br />
何かを賭けようと、<br />
初めは面白半分が日が立つ従い、<br />
昼夜を分かたず丁半に熱中する。<br />
掛け金も大きく破産者も出る。<br />
人数足らぬ時に誘いに来る。<br />
皆は半玄人、<br />
振込み多く取り返しに大きく賭けるが駄目。<br />
ある時、<br />
親をして大きく勝つ。<br />
それを潮に止める。<br />
将棋、花札、麻雀は、<br />
遊び方も対して変わらぬが、<br />
トランプ遊びには、<br />
日本式、米国式、中国式とあるのに、<br />
驚き戸惑った。<br />
<br />
邦人達、<br />
生活に追われるのか、<br />
昼夜を分かたず訪問販売をする。<br />
日本で有れば、<br />
一度発令すると厳しく取り締まるが、<br />
中国は、<br />
ままぁふぅふぅ(イイカゲン)で、<br />
取り締まりも無きに等しい。<br />
内地に何時帰れるか、<br />
市街に出ると様々な流言飛語が飛び交う。<br />
どれも信じて良いのやら迷う。<br />
またしても何時帰れるのであろうか。<br />
<br />
階下に降りると老人に呼び止められる。<br />
話しは、<br />
何時かこの状態が解ける。<br />
その時にシドニーの支店に来て貰いたい。<br />
否、<br />
私は職人も未熟です。<br />
それに商売は全然知りません。<br />
否、<br />
私が教えます。<br />
是非来て欲しいです。<br />
説得されて契約をする。<br />
後日、<br />
この家の食堂で一席設けます。<br />
その時に出席してください。<br />
当日、<br />
毎日お馴染みの食堂に入ると、<br />
天井には煌煌とシャンデリアの輝きで別天地。<br />
白布の上には、<br />
西洋映画でお馴染みの食器が並ぶ、<br />
そして西洋料理。<br />
招待者であろう人達が十名程並ぶ。<br />
皆は何処かの社長か重役だろう。<br />
一瞬戸惑う。<br />
後ろに正装のボーイが立つ。<br />
社長、<br />
挨拶の折り、<br />
今度ここで私の会社に来て貰う新しい社員です。<br />
宜しくお見知り置きと、<br />
挨拶される。<br />
私は起立して深々と頭を下げて、<br />
宜しくと。<br />
食事が始まるが私は順序をまったく知らぬ。貝<br />
後ろに立つボーイに宜しくと、<br />
頭を下げ助太刀を頼む。<br />
食事は美味しくいただく。<br />
終了直前、<br />
ボーイ長の挨拶を聞いて驚いた、<br />
今を時めく敵将軍、<br />
蒋介石の賄い長。<br />
一介の商人が何処まで、<br />
中国に食い込んでいるのであろうかと驚く。<br />
この社長さん、<br />
ふとした風邪引きが悪化して、<br />
正月を前に死亡する。<br />
葬式に折りに息子さんが、<br />
平時であれば、<br />
数百人の会葬者ありと。<br />
十人にも満たぬ会葬者を寂しく眺める。<br />
焼き場に運ばれる時、<br />
私も小雨降る寒い日、<br />
手車に乗せた死体。<br />
中国兵に人数制限されて、<br />
戸口で見送る。<br />
人生航路は、<br />
様々教えられた私のシドニー行きは、<br />
果敢無い夢に終わる。
]]></content:encoded>
    <dc:subject>中国</dc:subject>
    <dc:date>2007-09-25T19:18:12+09:00</dc:date>
    <dc:creator>寅の知</dc:creator>
    <dc:rights>寅の知</dc:rights>
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